痛風は尿酸値が高くなることで関節に激しい痛みを引き起こす病気で、日々の飲料選びも大きく影響します。
「ポカリスエット」は水分補給に役立つイメージがありますが、実はその成分が痛風患者にとって逆効果になる可能性があります。
本記事では、ポカリスエットが痛風に与える影響や痛風改善に適した飲料・避けるべき飲料、さらに生活習慣でのポイントについて詳しく解説します。
痛風を予防・改善するために正しい知識を身につけましょう。

この記事の監修者
エミシアクリニック院長
上野 一樹先生
2020年 医師免許取得
2020年 倉敷中央病院 初期研修医
2022年 神戸市立医療センター中央市民病院 救急科
2023年 9月 エミシアクリニック 院長就任
痛風ならポカリスエットは要注意!成分と痛風への影響は?
ポカリスエットは痛風患者にとって、必ずしもよい飲み物ではありません。
スポーツ時の水分補給としては優れた飲み物ですが、飲み方を間違えると痛風を悪化させる可能性があります。
痛風への影響を知るために、まずはポカリスエットについて正しく理解しましょう。
ポカリスエットの基本コンセプトは、「スポーツで汗をかいた際に水分を補給するための健康飲料」です。
そのため、人間の体液に近い電解質濃度(体内のミネラルイオン濃度)で作られており、ポカリスエットを飲むと効率よく栄養と水分を補給できます。
ただし、ポカリスエットに含まれる糖質は尿酸値を高める成分でもあり、飲みすぎると痛風を悪化させる可能性があります。
ポカリスエットを飲むメリットとデメリットについて、以下で詳しく見ていきましょう。
ポカリスエットを飲むメリット
痛風の人がポカリスエットを飲むと、主に以下のメリットがあります。
- 水分補給(脱水回避)
- 電解質
- 吸収効率
ポカリスエットは水分・少量の糖質・電解質を同時に補えるため、汗を多くかいた状態で効率よく水分を補給できる飲み物です。
【ポカリスエット100mgあたりの栄養成分】
- エネルギー:25kcal
- タンパク質:0g
- 脂質:0g
- 炭水化物:6.2g
- 食塩相当量:0.12g
- カリウム:20mg
- カルシウム:2mg
- マグネシウム:0.6mg
※出典:ポカリスエット基本情報|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
上記の成分の中には5.7%の糖質も含まれており(※)、成分の1つであるブドウ糖が早い栄養素の吸収を手助けしています。
※参照:運動能力の維持に|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
そのため、適量のポカリスエットを摂取すれば、尿酸値を高める原因となる脱水の防止につながります。
またポカリスエットに含まれる電解質は、体内の水分量を整え、疲れの防止や筋肉を効率よく動かす効果がある物質です。
たとえば、脱水時に水ばかりを飲むと体内の電解質バランスが崩れ、体調不良を起こす原因になりますが、ポカリスエットなら健康的に水分補給ができます。
さらに、適度に含まれる糖質は水分の吸収効率を高め、尿酸値の上昇を防ぐ役目を果たします。
ポカリスエットに含まれる食塩相当量は日本スポーツ協会が推奨する0.1~0.2g(100ml中)に該当しており(※)、効率のよい水分補給ができる飲み物です。
※参照:本スポーツ協会|スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック
スポーツなどで大量に汗をかいたときには、ポカリスエットが水分補給を助けてくれるでしょう。
飲み方やタイミングが適切であれば、ポカリスエットは上記のような複数のメリットに期待できます。
ポカリスエットを飲むデメリット
一方、痛風の人がポカリスエットを飲むと、以下の作用によりデメリットが生じます。
- 果糖が尿酸値を高める
- 乳酸により尿酸の尿酸の排泄を制御する
ポカリスエットには含まれる果糖(単糖の一種)は、尿酸値を上げる作用がある物質です。
さらに、果糖の代謝物である乳酸は尿酸の排泄を制御する効果もあり、尿酸値が上昇する直接の原因にもなります。
※参照:公益社団法人 福岡県薬剤師会
そのため、痛風の方がポカリスエットを常飲すると、症状を悪化させる可能性があります。
ポカリスエット以外にも、果糖が含まれる飲料(スポーツドリンク・果汁ジュースなど)を飲む際は、尿酸値の上昇に注意しなければなりません。
ただし、運動時や脱水時には有効な場合があるため、飲む場面を間違えなければメリットが多い飲み物でもあります。
痛風患者がポカリスエットを飲むときの注意点
痛風患者がポカリスエットを飲む際は、タイミングや飲み方を守らなければ、症状の悪化につながります。
そこで、ポカリスエットを飲む際の注意点を、以下2つの観点から解説します。
痛風患者にとってポカリスエットは、効果的にも逆効果にも作用する可能性がある飲み物のため、注意点を守って飲みましょう。
飲むべきタイミング
痛風の方がポカリスエットを飲む適切なタイミングは、以下のようなシーンです。
- 運動をした時
- 汗をかいた時
- 体調が悪くて栄養補給がままならない時
運動をした時や汗をかいた時は、体内の水分が失われます。
そこで、効率よく水分を吸収できるポカリスエットを飲むと、脱水や筋肉疲労の防止に期待できます。
運動時には水よりも吸収効率がよいポカリスエットの方が、適切な飲み物と言えるでしょう。
また、体調が悪くて栄養補給がままならない時も、ポカリスエットを飲むと効果的です。
水分・少量の糖質・電解質を同時に補えるポカリスエットなら、体調が悪い時でも負担なく栄養補給ができるでしょう。
ただし、あくまでも効率がよいシーンは限定的であり、常飲すると果糖や乳酸により痛風を悪化させる可能性があります。
日々の水分補給は水やお茶をメインとし、限定的にポカリスエットを活用するとよいでしょう。
適量と飲み方の目安
日常的にポカリスエットを飲む場合は、以下3点に気をつけましょう。
- 1日の摂取量目安は500ml
- 少量を分けて飲む
- 就寝前・食事中は摂取を避ける
ポカリスエットには尿酸値を高める糖質も含まれています。
糖質は適度なら水分補給に効果的ですが、過度に摂取すると痛風を悪化させえる原因となるため、飲み過ぎは禁物です。
目安としては1日500ml以内で、一気飲みせず少量を分けて飲むように心がけましょう。
食事中に大量の水分を摂取すると、胃酸を薄めて消化に悪影響をきたします。
また、夜中のトイレによる睡眠障害を避けるため、就寝前の摂取もおすすめできません。
基本的には痛風患者の日常的な摂取はおすすめできませんが、普段からポカリスエットを飲む場合は、上記の点に注意しましょう。
痛風改善には水分補給が大切!適した飲料と避けるべき飲料は?
痛風の予防・改善には、尿酸値を正常に保つことが不可欠です。
そのためには水分補給が重要な役割を果たします。
十分な水分を摂取することで尿量が増加し、尿酸の排泄が促進されます。
しかし、選ぶ飲料によっては逆効果となることもあります。
痛風患者に適した飲料

痛風患者に適した飲料は、基本的には糖が入っていない飲料・利尿作用がある飲料・乳製品などがおすすめです。
- 水
- 炭酸水(無糖・無添加)
- コーヒー
- 緑茶・麦茶
- 乳製品
- 無塩トマトジュース
- 果糖の入っていない野菜ジュース
痛風患者には、水(ミネラルウォーター)や無糖のお茶が適しています。
ミネラルウォーターは体に優しく、尿酸値のコントロールに最適です。
緑茶や麦茶、ルイボスティーなどもカフェインが少なく、水分補給として適しています。
また、牛乳やヨーグルトドリンクなどの乳製品には、尿酸値を低下させる働きがあることが研究で明らかにされています。
これらの飲料を日常的に取り入れることで、尿酸値の管理がスムーズになるでしょう。
無塩トマトジュースや果糖の入っていない野菜ジュースも、痛風患者におすすめの飲み物です。
トマトジュースや野菜ジュースは低カロリーかつ、尿をアルカリ性にする作用があるリコピン・ビタミンミネラルが豊富で、尿酸値の低下に期待できます。
ただし、糖質が添加されたジュースは逆効果となる場合があるため、トマトジュースや野菜ジュースを飲む際は、成分表を確認しましょう。
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コーヒーについて詳しくはこちら
>>尿酸値が高いとコーヒーはNG?飲むときのポイントや今からできる生活習慣を解説
痛風患者が避けるべき飲料

糖分が多い清涼飲料水やアルコール類は、尿酸値を上昇させる要因となるため避けるべきです。
- ビール
- 日本酒
- ウイスキー
- ジュース
- 清涼飲料水
特にビールや日本酒にはプリン体が多く含まれており、痛風発作のリスクを高める要因です。
アルコール飲料を控える場合は、下記1日あたりのアルコール摂取量の目安を参考にしてください。
ビール | 500ml |
日本酒 | 1合 |
ウイスキー | 60ml |
※参照:厚生労働省
また、果汁100%ジュースや炭酸飲料も糖分が高く、摂取しすぎると痛風を悪化させるリスクがあるため注意が必要です。
飲料選びには成分表を確認し、尿酸値への影響を考慮しましょう。
そもそも痛風になる原因は?

痛風は、体内で尿酸が過剰に増え、関節に結晶化した尿酸が溜まることで炎症を引き起こす病気です。
また尿酸は、食事や体内で代謝される「プリン体」という物質が分解される際に生成されます。
通常尿や汗として体外に排出されますが、尿酸の生成量が多すぎたり排泄がうまくいかない場合、体内に蓄積して高尿酸血症を引き起こし痛風が発症します。
痛風の発症リスクを高める高尿酸値症の主な原因は以下のとおりです。
- 糖質
- 果糖ぶどう糖
- 脱水
- 肥満
- ストレス
- 睡眠不足
- 遺伝
砂糖や果糖ぶどう糖液糖を含む飲料や食品を摂りすぎると、血糖値が上昇しインスリン分泌が促されます。
このインスリンは尿酸の排泄を妨げるため、尿酸値を上昇させる原因の一つです。
また、糖分の過剰摂取は肥満の原因にもなり、痛風リスクをさらに高めます。
脱水症状も痛風を悪化させる要因の一つで、体内の水分が不足すると尿量が減り尿酸が排泄されにくくなります。
そのため、適切な水分補給は非常に重要です。
無糖の水やカフェインの少ないお茶を日常的に摂取し、尿酸値をコントロールすることが痛風の予防・改善につながります。
また、ストレスや睡眠不足も痛風を発症させる原因の一つです。
マウスを使用した研究では、ストレスが高尿酸血症の発症に関与していることが証明されており、結果的に痛風の発症率を高めています。
※参照:名古屋大学 ストレスが高尿酸血症の発症に関与するメカニズムを解明
さらに、痛風の原因となる高尿酸血症は、遺伝的背景が関与していることも証明されています。
※参照:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン
そのため、家族に痛風患者や高尿酸血症の方がいる場合は、痛風が発症するリスクが高いと認識しておきましょう。
水分補給以外で痛風を悪化させないための生活習慣
痛風を予防・改善するためには、水分補給に加えて生活習慣全体を見直すことが大切です。
生活全般を整えることで、痛風リスクを大幅に軽減することが可能です。
尿酸値のコントロールを意識した食事と飲酒を意識する
痛風を予防・改善するためには、下記のポイントを意識した食生活を送りましょう。
- プリン体を多く含む食品の摂取制限
- 尿酸値を下げる効果が期待できる食品(野菜、海藻類など)
- バランスの良い食事の重要性
プリン体は尿酸のもととなる物質で、特に魚卵・レバー・青魚・ビールなどに多く含まれています。
※参照:帝京大学

これらの食品をできるだけ避けるか、量を減らすことが重要です。
一方、尿酸値を下げる効果が期待できる食品として、野菜・海藻類・きのこ類・果物などが挙げられます。
※参照:帝京大学
これらは低プリン体食品であるだけでなく、ビタミンやミネラル・食物繊維が豊富で、体内の代謝を助ける働きもあります。
炭水化物・物タンパク質・脂質を適切な割合で摂取し、過度な食事制限は避けるようにしましょう。
日々の食事を工夫することで、痛風のリスクを大幅に減らすことが可能です。
適度に運動をする
痛風を悪化させいないために適度な運動をしましょう。
運動には血流を良くし、尿酸の排泄を促す効果があります。
また、肥満は尿酸値を上昇させる要因の一つであるため、運動による体重管理が重要です。
ただし、激しい運動は乳酸を増加させ、尿酸値を上げる可能性があります。
ウォーキングや軽いストレッチ、ヨガなどの適度な運動を日常に取り入れるのがおすすめです。
無理なく続けられる運動習慣を身につけることで、痛風の予防と症状の改善に繋がります。
ストレス管理や十分な睡眠も大切
ストレスや睡眠不足も尿酸値を悪化させる原因の一つです。
ストレスが過剰にかかるとホルモンバランスが崩れ、尿酸値のコントロールが難しくなります。
また、睡眠不足は疲労を蓄積させ、尿酸の排泄機能が低下するリスクを高めます。
趣味を楽しむ・深呼吸や瞑想を行う・寝る前のリラックス時間を設けるなどが効果的です。
痛風の症状が辛い場合や尿酸値が気になる場合には、クリニックでの治療もおすすめします。
忙しい日々の中で医療機関に足を運ぶ時間が取れないという方も多いでしょう。
そんな方におすすめなのがオンライン診療です。
エミシアクリニックのオンライン診療は、自宅にいながら専門医に相談できるメリットがあります。

医師が尿酸値に関する不安や症状についての適切なアドバイスや治療法をご提供いたします。
痛風は病院に繰り返し通って治療する必要がありますが、エミシアクリニックのオンライン診療は相談から処方まで自宅から受けられるので便利です。
またエミシアクリニックなら、治療薬以外に痛み止めもついて税込4,380円~とお得なうえに、送料・診察料がかかりません。
尿酸値のコントロールが難しいと感じる方や具体的な生活改善法を知りたい方は、ぜひオンライン診療を利用してみてください。
痛風についてよくある質問と回答
痛風は生活習慣や体質に大きく関わる病気で、疑問を持つ方も多いでしょう。
痛風の初期症状や治療に使用される薬の種類・飲料の選び方など、よくある質問に回答します。
適切な知識を得ることで、痛風の予防や悪化防止に役立てましょう。
痛風の初期症状はある?
痛風の初期症状として、足の親指や関節部にピリピリとした違和感や軽い痛みを感じることがあります。
主な初期症状は下記の通りです。
- 関節部にむくみや軽い腫れを感じる
- 関節部にピリピリとした違和感を感じる
- 発熱
- 倦怠感
- 赤く腫れている
- 患部が熱を持っている
初期症状に気づいたら、できるだけ早く医師に相談しましょう。
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痛風治療で使用する薬の種類は?
痛風の治療には、尿酸値を下げる薬や痛みを抑える抗炎症薬が使用されます。
種類 | 主な薬 |
痛風発作抑制薬 | ・コルヒチン錠 ・プレドニゾロン錠 |
尿酸値治療薬 | ・フェブキソスタット錠 ・ベネシッド錠 |
それぞれ使用するタイミングが異なるので、医師の指示に従い適切に使用することが大切です。
まず初めに痛風発作を抑えてから、尿酸値を下げる治療を行います。
エミシアクリニックでも、取り扱っておりますので、気になる人は一度ご相談ください。
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>>フェブキソスタットの副作用とは?痛風治療薬の効果や注意点を徹底解説
ポカリスエット以外のスポーツドリンクなら痛風でも飲んでもいい?
痛風患者にとって、ポカリスエット以外のスポーツドリンクも基本的には注意が必要です。
※参照:順天堂大学
多くのスポーツドリンクには糖分が含まれており、過剰に摂取すると尿酸の排泄を妨げ、尿酸値を上昇させる可能性があります。
糖分の摂取は血糖値を急上昇させ、インスリン分泌が活発になることで尿酸値のコントロールが難しくなるため、特に過剰摂取は控えるべきです。
どうしてもスポーツドリンクを飲みたい場合は、糖分が少ないものや無糖の電解質補給飲料を選ぶと良いでしょう。
ポカリスエットは尿酸値を下げる効果がある?
ポカリスエット自体に尿酸値を下げる効果はありません。
ただし、ポカリスエットで水分補給をすることで効率的に尿を排出でき、結果的に尿酸値が下がる場合もあります。
ポカリスエットに含まれている糖分(果糖など)は尿酸値を高める成分であり、日常的に飲むと悪影響をきたす可能性があります。
ポカリスエットは間接的に尿酸値を下げる可能性があるものの、直接的に尿酸値を高める成分が入っていると認識しておきましょう。
痛風は放置すると危険?
痛風を放置することは非常に危険です。
痛風は単なる関節の痛みで終わる病気ではなく、放置すると下記のような合併症を引き起こす可能性があります。
- 慢性痛風関節炎
- 尿酸腎症
- 腎不全
- 高血圧
- 心疾患
- 脳卒中
早期に適切な治療を受け食事や生活習慣を見直すことで、これらのリスクを回避できます。
痛風の症状を軽視せず、医師の指導のもとで早めに対応することが重要です。
痛風患者は適切な水分補給と飲料選びが大切
痛風患者にとって「ポカリスエット」の摂取には注意が必要です。
糖分が多く含まれるため、尿酸の排泄を妨げて尿酸値を上昇させる可能性があります。
痛風改善には生活習慣の見直しも重要です。
痛風は放置すると関節や腎臓に深刻なダメージを与えるため、早めの治療と正しい生活習慣の実践が大切です。
根本的な改善を求めている方は治療薬をご検討ください。
エミシアクリニックなら痛風発作が辛い時でも自宅からオンライン診療を受診していただけます。