アフターピルを飲んだあと、下腹部に違和感があると「まさか妊娠した?」「異常なサイン?」と不安に感じるものです。
緊急避妊に用いるアフターピルは、ホルモンに作用する薬のため、下腹部の違和感は副作用の一つであることが多いです。
一般的に数日で治まることが多いですが、しばらく経っても治まる気配がなく症状が強い場合は、緊急を要する異常の可能性もあるため注意してください。
この記事では、アフターピル服用後の下腹部の違和感の理由やいつまで続くのかについて詳しく解説します。
痛みを和らげる方法や医療機関に相談する目安についても触れているため、下腹部に違和感がある人は参考にしてください。

この記事の監修者
エミシアクリニック院長
上野 一樹先生
2020年 医師免許取得
2020年 倉敷中央病院 初期研修医
2022年 神戸市立医療センター中央市民病院 救急科
2023年 9月 エミシアクリニック 院長就任
アフターピル服用後、下腹部に違和感を感じる理由
アフターピルを服用すると、一時的に下腹部に違和感を覚えることがあります。
これは多くの場合、ホルモンによる体の急激な変化に伴う副作用です。
アフターピルには高濃度の合成ホルモン(レボノルゲストレル・ウリプリスタル酢酸エステル)が含まれており、卵巣や子宮に働きかけます。
その結果、次のような変化が起こるため、生理痛に似た張りや痛みを感じやすくなります。
- 排卵を抑制する
- 急激な変化で子宮を収縮させる
- 子宮粘膜を変化する
特に、粘膜を排出する役割のある「プロスタグランジン」というホルモンの影響で子宮収縮が強まり、違和感として現れることもあります。
通常、アフターピル服用後に感じる下腹部の違和感は一時的であり、数日以内に治まるため、過度に心配する必要はありません。
※参考:一般財団法人日本医薬情報センター
アフターピルの効果に関して詳しくはこちら!
アフターピル(緊急避妊薬)の効果と避妊の仕組みとは?
アフターピル服用後に感じやすい下腹部の違和感
アフターピルによる下腹部の違和感にはいくつかのパターンがあります。
一般的には軽い生理痛のような鈍い痛みや張りが多く、痛みの感じ方には次のように分類できます。

| 痛みの種類 | 痛みの感じ方 |
|---|---|
| 鈍い痛み | 下腹部全体が重く、圧迫されるような感覚 |
| 痙攣性の痛み | 波のように強まったり弱まったりする痛み |
| 鋭い痛み | 一部に集中する刺すような痛み |
アフターピルに配合されるホルモンの影響で、卵巣や子宮に急激な変化が起こるため、普段感じる生理の痛みより強く感じる場合もあります。
ただし、これらの症状はホルモン変化による一時的な子宮の反応であり、多くは自然に治まっていくため服用後は安静にして過ごしてください。
アフターピル服用後の下腹部の違和感・痛みはいつまで続く?
アフターピル服用後に下腹部の違和感や痛みがあっても、多くは一時的なもので数日以内に自然に治まります。
痛みや違和感は、体内のホルモン濃度の急激な変化によるもので、薬が吸収・分解されると引いていく症状です。
目安として、症状は服用後24時間から数日間で落ち着くことが多いとされています。
ただし、日常生活に支障をきたすような強い痛みが長く続く場合は、子宮外妊娠など別の原因が隠れている可能性もあるため、医療機関を受診してください。
アフターピルによる下腹部の違和感を和らげる方法
下腹部の違和感は自然に軽快することが多いですが、以下の方法で違和感が和らぐ場合があります。

- 腹部を温める(カイロや温かい飲み物)
- 無理のない範囲で安静を心がける
- 鎮痛薬を必要に応じて使用する
- 水分補給をして体調を整える
温めることで子宮周辺の血流が改善し、痛みが和らぐことがあります。
市販の鎮痛薬を服用しても問題ありませんが、病院で処方された鎮痛薬やその他の薬を飲むときは、医師に確認してから服用してください。
回復を早めるためにも、セルフケアを取り入れつつ無理をせず安静に過ごしましょう。
下腹部痛が強い・長期間続く場合は医療機関に相談しよう
アフターピルの副作用による下腹部の違和感は一時的なケースがほとんどですが、強い痛みが続く場合には注意が必要です。
痛みが続く原因として、以下のような別の病気・症状が隠れている可能性もあります。
- 妊娠
- 子宮外妊娠
- 感染症
特に次のような症状が現れた場合は、早急に医療機関を受診してください。
- 高熱がある
- 激しい痛みが長時間続く
- 出血量が異常に多い
- 意識が朦朧(もうろう)とするような吐き気やめまいがある
エミシアクリニックでは、LINEでアフターピル服用後の体の違和感についてご相談いただけます。
自分で判断するのが難しい場合でも、気軽に相談できるためぜひご利用ください。
下腹部の違和感以外に考えられるアフターピルの副作用と対策
アフターピル服用後は、下腹部の違和感以外にも、体にさまざまな副作用が出る可能性があります。
以下では特によく見られる副作用を解説します。
あらかじめ症状を理解しておくと安心して服用できるため、代表的な症状と対処法を知っておくことが大切です。
アフターピルの副作用に関して詳しくはこちら!
アフターピルの副作用はいつからいつまで?不妊に繋がる説や吐いた時の対処法なども解説!
吐き気・嘔吐
アフターピルの副作用には吐き気があり、国内データでは約5%以上の人が感じています。
しかし、ほとんどは軽度で時間とともに治まるため心配しすぎる必要はありません。
吐き気や嘔吐の症状を和らげる対策は以下の通りです。
- 服用時に軽食を摂る
- 水分をこまめに摂る
もし服用2時間以内に嘔吐した場合は、薬が吸収されていない可能性があるため、必ず医師に相談してください。
※参考:ノルレボ錠
不正出血
アフターピル服用後は、数日から1週間以内に不正出血が起こることがあります。
これは「消退出血」と呼ばれるもので、半数近くの人に起こる比較的よくある副作用です。
ホルモンバランスの変化によって起きる症状であり、出血量は少なく2〜3日で治まります。
また、生理周期にも影響を与え、生理が予定より早まったり遅れたりすることもあります。
基本的には心配ありませんが、生理以上の大量出血や1週間以上続く場合は、すぐに医療機関を受診してください。
※参考:ノルレボ錠
アフターピル服用後の不正出血に関して詳しくはこちら!
アフターピル服用後の不正出血はいつ終わる?血が出る期間や消退出血との違いを解明
頭痛・倦怠感・眠気
ホルモンの変化により、頭痛やめまい、倦怠感、眠気が一時的に出ることがあります。
なかでも頭痛は国内データでも12%程度あると報告され、比較的起こりやすい副作用です。
しかし通常は軽度のため、市販の鎮痛薬で対応できます。
症状がある日は無理をせず、安静に過ごすことが大切です。
なお、眠気やめまいを感じる場合は、可能な限り車の運転や集中を要する作業を避けてください。
※参考:ノルレボ錠
乳房の張り
アフターピルの服用により、乳房の張りや軽い痛みを感じることがあります。
薬に配合されるホルモンの影響で一時的に起こるもので、頻度は少なく稀な症状です。
通常は数日以内に自然に治まるため、特別な治療は不要です。
気になる場合は、締め付けの少ない服や下着を着用するなど工夫するといいでしょう。
注意すべきアフターピルの重篤な副作用
アフターピルは世界的に安全性が確認されており、重篤な副作用は稀です。
しかし、ホルモン薬である以上、特定の持病や体質によっては以下の副作用に注意が必要です。
健康な人が一度の服用で深刻な障害が起こる可能性は、非常に稀です。
しかし、体に深刻な症状を引き起こすリスクについては理解しておく必要があるため、事前に確認しておきましょう。
血栓症
血栓症とは、血液が固まって血管を塞ぎ、肺や脳に障害を及ぼす重篤な病気です。
ホルモン剤に含まれるエストロゲンには血液凝固因子の合成を促進する働きがあり、血栓症のリスクを高める可能性があります。
万が一、服用後に以下の症状があらわれた場合は、血栓症の可能性があるため直ちに受診してください。
- 強い胸痛
- 息苦しさ
- 脚の腫れや痛み
前提、アフターピルはエストロゲンを含まないため、血栓症の発生率はほとんど問題になりません。
ただし、高血圧や肥満、喫煙習慣がある人は、服用以前に血栓症のリスクが高い状態のため、処方には医師の慎重な判断が必要です。
※参考:一般社団法人 日本血栓止血学会
肝機能障害
アフターピルは肝臓で分解されるため、肝機能が低下している人が服用すると肝障害を引き起こす可能性があります。
服用後に黄疸(おうだん)や強い倦怠感が出た場合は、速やかに医療機関を受診してください。
※皮膚や目の白い部分が黄色くなる症状
通常、健康な人が緊急避妊のため一度服用する程度で、深刻な肝障害が起こる可能性は低いです。
しかし、肝炎や肝硬変など既往がある人は、必ず医師に相談してください。
アレルギー反応
アフターピルの成分や添加物に対してアレルギーがある場合、発疹や痒み、蕁麻疹(じんましん)などが現れることがあります。
極めて稀ですが、アナフィラキシーのように呼吸困難や喉の腫れを伴う重篤な反応を起こす可能性も否定できません。
そのため、アフターピルは過去に成分への過敏症がある人は禁忌とされています。
服用後に皮膚症状や呼吸の異常を感じた場合は、ためらわず救急車を呼んで治療を受けてください。
重篤なアレルギー反応は頻度こそ低いものの、命に関わるため迅速な対応が必要です。
アフターピルの服用に関してよくある質問
ここではアフターピルの服用後の体調に関してよくある3つの質問を解説します。
効果を正しく理解することで、安心して服用できるため確認しておきましょう。
服用後に副作用がなかったら効果もないの?
副作用の有無と効果の強弱は無関係です。
下腹部の違和感や吐き気などの副作用が現れるかは、体質によって異なります。
実際に副作用が強く出る人もいれば、ほとんど症状が出ない人もいます。
副作用がないからといって「効いていないのでは」と不安になる必要はありません。
アフターピルの避妊効果は100%ではありませんが、正しく服用できていれば、副作用の有無に関係なく効果に期待できます。
アフターピルを飲んだ後、避妊できたサインはある?
服用後3〜7日以内に出血する「消退出血」が起こる場合が多く、これは妊娠が成立しなかった一つの目安になります。
しかし、この出血が必ずしも避妊成功を意味するわけではなく、妊娠時の着床出血との判断はつきにくいものです。
逆に、出血がなかったとしても避妊できている場合もあります。
信頼できる確認方法は、生理予定日から1週間以上経っても生理が来ない場合に妊娠検査薬でチェックするか、産婦人科を受診することです。
アフターピル服用後の出血だけで判断せず、数週間後に必ず避妊成功の確認を行うことが重要です。
アフターピルで避妊成功の確認方法に関して詳しくはこちら!
アフターピル服用後に避妊に成功したか確認する方法|副作用や失敗の原因を解説
アフターピルは不妊に繋がるって本当?
アフターピルが将来の妊娠率に悪影響を与えるという医学的な報告はなく、不妊に繋がることはありません。
薬の作用は一時的にホルモンバランスを変化させて排卵を抑えるだけで、子宮や卵巣の機能を失くすものではないためです。
服用後、数日〜1週間程度で体は通常のホルモン状態に戻り、次の排卵周期からは妊娠可能な体に戻ります。
「不妊になるのでは」という不安から服用をためらう必要はなく、避妊に失敗した際は早めに服用することが大切です。
アフターピルの不妊への影響に関して詳しくはこちら!
アフターピルは不妊につながる?副作用や服用頻度のリスクもあわせて解説
下腹部の違和感はよくあるアフターピルの副作用の一つ
アフターピル服用後に下腹部へ違和感を覚えることは、多くの人に見られる一般的な副作用の一つです。
ホルモンバランスが急激に変化することによって子宮や卵巣に一時的な反応が起こるためであり、必ずしも異常ではありません。
多くの場合、違和感は数日以内に自然と軽減していきます。
ただし、以下の症状がある場合は、感染症や他の病気の可能性も否定できません。
- 痛みが強い
- 出血量が多い
- 痛みが1週間以上続く
このような症状があるときは、不安を一人で抱え込まず、適切な判断をするために早めに医療機関を受診してください。



