ED(勃起不全)にお悩みのご夫婦は、子作りへの影響やパートナーとの関係性に不安を持つことでしょう。
今回の記事では子作り中にEDにお悩みの方へ向けて、EDの原因や適切な改善策について解説します。
この記事を読み改善策を実践することで、EDを改善することが可能でしょう。
この記事を監修した医師
上野 一樹
UENO KAZUKI
2020年 医師免許取得
2020年 倉敷中央病院 初期研修医
2022年 神戸市立医療センター中央市民病院 救急科
2023年 エミシアクリニック 院長就任
成人男性の5人に1人がEDに悩んでいる
厚生労働省の調査では、成人男性の5人に1人という多くの方がEDを自覚し悩んでいるという結果があります。
男性全体に「あなたはご自身がEDだと思いますか?」と質問したところ、19.9%が「思う」と回答しており、成人男性の約5人に1人がEDを自覚していることがわかりました。
年代ごとに見てみると、20代男性では8.7%、30代男性では13.6%と、30代男性の1割以上がEDを自覚しています。
20代、30代男性は結婚・出産といった重要なライフイベントを迎える世代であり、厚生労働省の『平成21年人口動態統計月報年計』でも、男性の平均初婚年齢は30.4歳となっています。
このような背景から、20代、30代男性とEDの関係が、今後、社会的にも影響を与えることが予想されます。
年齢が上がるほどEDの割合は増える傾向がありますが、若い世代にも多くは心因的な理由で広がっています。※
※参考元:バイエル薬品株式会社「ED(勃起障害)に関する現代人の意識調査」
パートナーとの良好な関係性を保つためにも、EDの根本的な解決を目指しましょう。
子作りしたいのに勃起しない!EDの原因とは?
EDの原因は大きく2種類に分類されます。
- 器質性ED
- 機能性ED
器質性EDとは病気やケガ等が原因で、陰茎や勃起に関わる組織の病変により引き起こされるEDのことです。
機能性EDは以下のように更に細分化されます。
【機能性EDの種類】
- 症状性ED…何らかの基礎となる原因(病気や摂取物など)がある
- 心因性ED…様々な心理的諸要因によるもの
EDにおいては心因性EDの占める割合が多いことが特徴です。
バイエル薬品株式会社の調査では、EDに悩む男性89.6%が「心理的な理由」と自覚しているという結果が出ています。
男女全体に「EDの原因は何だと思いますか?」と質問したところ、「うつやストレスなどの心理的な理由から」が89.6%、「生活習慣病(糖尿病。高血圧など)から」が64.0%という高い数値を示しました。
(引用:バイエル薬品株式会社「ED(勃起障害)に関する現代人の意識調査」
ここからは子作りに影響を与える心因性EDについて詳しく解説します。
- ストレス
- 子作りへのプレッシャー
- 妻だけED
項目ごとにご紹介するので、自身が心因性EDの可能性があるかも分かるでしょう。
また、より詳しくEDの原因について知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
ストレス
ストレスにより、EDの発生率は高まると言われています。
うつ症状と心血管疾患とEDの3者が共存しやすいことが指摘されており、ED患者を外来に迎えた場合、うつと心血管疾患の合併を念頭に置いた診療が推奨されている113)。
また、心的外傷後ストレス障害(PTSD)によって ED 発生率が高まることが知られている。
心因性EDにおけるストレス要因は大きくわけて以下の2種類。
- 現実心因によるストレス
- 深層心因によるストレス
現実心因によるストレスとは、仕事や人間関係によるストレスなど日常で起こり得るものです。
深層心因によるストレスは、心の奥底にある過去のトラウマ等によりEDが発症するものを指します。
トラウマからEDを発症するケースについて、以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
子作りへのプレッシャー
「子作り」という目的そのものがEDの原因になるケースもあります。
子作りはタイミングを合わせて計画的な性行為を繰り返し行う必要があるため、使命感や責任を感じやすいでしょう。
妊娠が上手くいかず回数を重ねるうちに、よりプレッシャーを感じていくこともあります。
プレッシャーの中では性的興奮を得るのは難しく、EDが発症するケースも考えられます。
子作りのためだけではなく、夫婦のコミュニケーションとして性行為をすることが大切です。
妻だけED
EDの中には、パートナーに対してだけ勃起しにくくなる「妻だけED」というケースがあります。
「妻だけED」の場合に考えられる原因は、以下の通り。
- 性行為の義務感
- 妻の体型や見た目の変化
- 妻を女性ではなく家族としてしか見れなくなった
妻以外には勃起するケースがほとんどで、性機能の異常ではなく心理的な要素が大きいと考えられます。
「妻だけED」は単に男性側の問題だけでない場合もあり、パートナーと話し合い根本的な原因を解決することが大切です。
「妻だけED」については以下の記事で詳しく解説していますので、是非ご覧ください。
子作り中のEDは克服できる!改善策を紹介
子作り中にEDに悩む夫婦へ向けて、以下の改善策について解説します。
- パートナーと話し合う
- ストレス解消
- 心理療法を受ける
- ED治療薬の服用
EDは治療できるため、EDにより子作りを諦める必要はありません。
EDの改善策から自身に合う対処法を見つけ、EDの改善を目指してください。
パートナーと話し合う
子作り中のEDに悩まれている場合、パートナーと話し合うことはとても重要です。
直接的にED改善に繋がる保証はありませんが、状況の悪化は防げるでしょう。
EDが原因で離婚に繋がるケースも珍しくないため、性行為や子作りへの不安を打ち明けることが大切です。
一人で悩まずに、夫婦2人の問題としてパートナーと共に解決策を見つけましょう。
ストレス解消
EDの原因となるストレスを解消することで、症状改善に繋がる可能性があります。
具体的なEDの原因となるストレスの解消法は以下。
- 適度な運動
- 快適な睡眠
- 親しい人との交流
- 笑う
- 仕事から離れた趣味
笑うことは自律神経を整える効果もあり、ストレス解消だけでなく健康上の観点からもおすすめです。
笑いが身体的指標に及ぼす効果については、ストレス関連指標や自律神経系に及ぼす効果が主に検討されている。
心拍変動を用いて自律神経系機能を評価した研究では、健常者72人において、6分間の偽笑い(面白くなくても笑うという行動をとってもらう)及びユーモアビデオ視聴による自然な笑い後はどちらも介入後に副交感神経機能の上昇、すなわち心身のリラクゼーションに有用であることが確認された
日々のストレスを軽減することで、緊張状態を緩和しED改善に繋がる可能性もあります。
ED症状が軽い場合や、精神的ストレスが溜まり性行為に影響している場合はセルフケアから始めてみましょう。
カウンセリングを受ける
カウンセリングを受けることで、ED改善ならびにパートナーとの関係や性生活の改善が期待できます。
EDに対する精神療法は、脱感作療法、感覚焦点法、カップル療法、行動療法、性教育、コミュニケーションと性的な技術の訓練や、マスターベーション訓練などのさまざまな介入が含まれる。
単独の介入や組み合わせた方法を含め、これらの方法のどれが最も有効であるかは明らかでない。
しかし、これらの介入が患者や患者とパートナーの関係や性生活を改善するのに役立つことは臨床経験が示している。
カウンセリングはカップルで受けることもできるため、パートナーとの関係性の改善を目指す方法のひとつです。
第三者であるカウンセラーが入ることで、冷静に話が進みお互いの悩みを理解しあえるかもしれません。
また、カウンセリングにより自分でも気が付かなかったEDの原因に気づけるでしょう。
ED治療薬の服用
ED治療薬を服用することで根本的なEDの改善に繋がる場合もあります。
ED治療薬は「PDE5阻害薬」とも呼ばれ、勃起を抑える酵素「PDE5」を阻害することでEDの改善を目指すもの。
日本では3種類のED治療薬が処方されます。
- バイアグラ
- レビトラ
- シアリス
それぞれの薬剤は有効成分や製薬会社が異なるものの、基本的な作用は同等です。
ただし、効果持続時間や食事の影響など細かな面で特性が異なるため、自身に合った薬剤を服用しましょう。
ED治療薬については以下それぞれの記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
ED治療薬は妊活中でも安心して服用できる!
ED治療薬の服用にあたり、妊娠や胎児への影響を不安視する方もいるでしょう。
しかし、男性が服用した薬による妊娠や胎児への影響はほとんどないとされています。
Q.男性が服用した薬剤でも妊娠や胎児に影響を与えることがありますか。
A.臨床データや催奇形性に関する報告はほとんどありません。
(中略)
精子に対する薬物の影響が考えられる場合は、精子形成期間が74日(±4~5日)であるため、薬物が精子に影響を与えるとすれば受精前約3ヶ月以内に投与された薬ということになります。
従って射精の直前であれば既に精子となって存在しているため、受精1~2日前に服用した薬の影響は考えなくてもよいことになります。
(引用:一般社団法人北海道薬剤師会「男性がづく要した薬剤の妊娠・胎児への影響」)
ED治療薬は性行為の約1時間前に服用するため、精子の形成に関わりません。
そのためED治療薬は妊活中でも安心して服用できると言えるでしょう。
不妊治療目的であればED治療薬は保険適用
これまでED治療は自由診療の扱いであり、治療費は全額自己負担でした。
しかし2022年4月より、条件を満たせば不妊治療目的でのED治療は保険適用になりました。
保険適用となるためのED治療における条件は、以下の通り。
【保険適用の条件】
- 処方を行う医師は泌尿器科で5年以上の経験を有すること
- 処方できる患者はEDガイドラインに従いEDと診断された者
- 患者またはパートナーが処方前6ヶ月以内に一般不妊治療管理料または生殖補助医療管理料に係る保険診療を受診していること
(参考元:厚生労働省「不妊治療で使用される医薬品の保険給付上の取扱いについて」)
上記以外にも細かい条件はありますが、ED治療費を抑えられる可能性があるため、選択肢の一つとしてもよいかもしれません。
子作り中のEDに関するまとめ
今回の記事では、子作り中でEDに悩む方へ向けて以下の内容を解説しました。
- 成人男性の5人に1人がEDで悩んでいる
- EDの原因は心理的要素が大きい
- EDはセルフケアや治療で改善できる
- ED治療薬は子作り中でも安心して服用できる
- ED治療薬の「バイアグラ」と「シアリス」は保険適用になる
EDを理由にして子作りを諦める必要はないでしょう。
EDには様々な原因があり、適切な対処や改善策が異なります。
今回の記事を参考にして、自身に適した改善策を見つけてみてください。
ED治療薬の服用で根本から解決を目指すのも一つの方法です。
ED治療薬は、医師の診察を受けて処方してもらいましょう。